「特別支援教育の生涯学習化」

 

 文部科学大臣は以下のように「特別支援教育の生涯学習化」を推進することになりました。とても良い方向性だと思います。

大臣のメッセージが端的に方向性を示しています。原文はルビ付きですので、はずしたものを以下に引用します。詳しくは,それぞれのリンクをご覧ください。

 動作法の地域活動など、「地域学校協働活動推進事業」の一環として認められると、学校職員の参加が容易になるのではないかと期待しました。

 

 

<文部科学大臣メッセージ>

特別支援教育の生涯学習化に向けて

 

                                       平成29年4月7日

                                       文部科学大臣 松野 博一(まつの ひろかず)

 

 私はかねてより、障害のある方々が、この日本の社会でどうしたら夢や希望を持って活躍していくことができるかを考えてきました。その中でも印象的だったのが、特別支援学校での重い知的障害と身体障害のある生徒とその保護者との出会いです。その生徒は高等部3年生で、春に学校を卒業する予定であり、保護者によれば、卒業後の学びや交流の場がなくなるのではないかと大きな不安を持っておいででした。他にも多くの保護者から同様の御意見を頂きました。

 これまでの行政は、障害のある方々に対して、学校を卒業するまでは特別支援学校をはじめとする「学校教育施策」によって、学校を卒業してからは「福祉施策」や「労働施策」によって、それぞれ支援を行ってきました。しかし、これからは、障害のある方々が、学校卒業後も生涯を通じて教育や文化、スポーツなどの様々な機会に親しむことができるよう、教育施策とスポーツ施策、福祉施策、労働施策等を連動させながら支援していくことが重要です。私はこれを「特別支援教育の生涯学習化」と表現することとしました。

 文部科学省では、このような観点から昨年12月に「文部科学省が所管する分野における障害者施策の意識改革と抜本的な拡充」を公表しました。併せて、省内の体制を確立するために「特別支援総合プロジェクト特命チーム」を設置しました。さらに、今年度から生涯学習政策局に「障害者学習支援推進室」を新設しました。今後、この「障害者学習支援推進室」を中心に、全省的に「Specialプロジェクト2020」や特別支援学校等における地域学校協働活動の推進、卒業後も含めた切れ目ない支援体制の整備の促進、障害のある学生への大学等における支援体制の充実等に取り組んでいきます。

 各地方公共団体におかれては、障害のある方々がそれぞれのライフステージで夢と希望を持って生きていけるよう、生涯にわたる学習活動の充実を目指し、生涯学習や特別支援教育、スポーツ、文化、福祉、労働などの関係部局の連携の下、国と共に取り組んでいただきますようお願いいたします。

 今週(4月2日~8日)は発達障害啓発週間です。

 改めて、国と地方公共団体、企業に加えて地域の皆様と共に、障害のある方々が分け隔てなく、互いに尊重し合いながら共生する社会の実現を目指していきたいと強く願います。

 

 

<依頼>

障害者の生涯を通じた多様な学習活動の充実について

○各都道府県・政令指定都市などの教委、大学等への依頼

 

 

文部科学省が所管する分野における障害者施策の意識改革と抜本的な拡充

○特別支援総合プロジェクト・タスクフォースの提言

 

 

地域学校協働活動推進事業など

○事業計画と予算

 

 

障害のある学生の修学支援に関する検討会(平成28年度) 第二次まとめ(概要)


特別支援総合プロジェクトについて

 中央教育審議会 > 生涯学習分科会 > 生涯学習分科会(第84回) 議事録 抜粋

生涯学習分科会(第84回) 議事録

 

1.日時  平成29年1月11日(水曜日)15時00分~17時00分

 

2.場所 文部科学省3F1特別会議室

 

3.議題

報告案件

第8期生涯学習分科会における審議の状況について

その他

(前略)
 

【明石分科会長】

 ありがとうございました。まだまだあるかと思いますけれども,先に進みたいと思います。

 では,次,特別支援総合プロジェクトについてでございます。岸本生涯学習推進課長,お願いします。

 

【岸本生涯学習推進課長】

 資料5‐1と5‐2でございます。資料5‐1の方が概要でございますので,こちらの方に従いまして御説明させていただきます。

 はじめにのところにございますが,従来,障害者の施策につきましては,文部科学省におきましては,特別支援学校ということで学校教育中心として進められてきており,その後の部分につきまして,教育,文化,スポーツ全体を通じた,生涯を通じた機会作り,地域とのつながり作りを推進していこうということで,今後,この障害者の自己実現を目指す生涯学習政策を総合的に展開していくということでまとめられたものでございます。

 具体的には,その下にございますけれども,タスクフォースというのを省内で設けまして,そちらで生活の場,福祉施設,仕事の場,特別支援学校等で様々な施策が行われているということについての報告,議論が行われました。

 このことも踏まえまして,その下,3番目,文部科学省において取り組むべき課題についてということで大きくまとめておりますけれども,一つには,特別支援学校における教育のみならず,その後の生涯を通じた学びを総合的に支援するという観点から,そのような総合的な企画立案部門というものを生涯学習政策局の中にまずは特命チームという形で設け,省横断的な推進体制を確立するとともに,今後,速やかに生涯学習企画室,仮称でございますけれども,そういった形で組織として置くことを目指すということでございます。

 2番目に,生涯を通じて,文化,スポーツ,教育学習等における様々な機会を充実していこうということで,詳細は割愛させていただきますけれども,各分野におけます障害のある方に向けた学習等の機会を充実させていくということを進めていくということでございます。

 3番目につきましては,これは教育分野における部分でございますけれども,一つには,特別支援学校における障害のある子供たちのキャリア教育の充実,あるいは生涯学習機会の充実。これは,例えば放課後等も含みますけれども,そういったものを含めまして,学校と卒業後の進路,生涯学習の活動の場との連携の促進に今後一層取り組んでいくということでございます。

 また,二つ目に,大学等高等教育の分野におきまして,特別支援学校との接続の推進,また,障害のある学生を支援する,そういう中核的拠点を整備するといったことによりまして,その支援体制を充実していくということでございます。

 

【明石分科会長】

 ありがとうございました。何か御質問,御意見ございますか。生重委員,お願いします。

 

【生重委員】

 コミュニティ・スクールになった京都市立西総合支援学校に行ってきたときに,特別支援学校ほどコミュニティ・スクールになる意義があると感じました。今,今後目指されるということが全て実現されているという現状がございました。地域における居場所もある。そして,生き方を選択できる場がある。それから,学校が置かれている地域の方たちの参画もあるということで,それぞれの意思が生かされるような場が創造されていると感じました。

 それと同時に,京都はすごいと思ったのですが,そこの支援校のコミュニティ・スクールの会長がNPOを立ち上げまして,天才アート展といって,全国の子供たちの作品を見せるアート展をやっている。京都市が廃校になった学校の一部を工房にして,若干予算を付けて,工房に参加している子供たちがいろいろな画材を選べるような体制になっています。それほど予算の掛かることではない。場を作り,画材を置き,その子たちがその場で作られた作品が,トートバッグであるとかクリアファイルであるとか,様々なものになって,それを我々が入場券を買って見にいった際にでも購入できる。本来の意味で,納税できるほどの自立化のお金になるということは,まだまだ無理かとは思いますが,でも,自分が生き方を選べる,自分がやりたいことができる,そういう一つの在り方はあると思って,いたく感銘を受けて,天才アート展がエリア,地域,県ごとの,これからの障害者の自立に向けての様々なありようを考えるきっかけになればと思い,できれば,いろいろな県に御紹介していきたいと思っているところです。

 

【明石分科会長】

 ありがとうございました。ほかによろしいでしょうか。

 私から1点だけ。この中の障害者青年学級という言葉ですが,生涯学習の中に,かつては青年学級というのがありましたが,いろいろな事情で廃止されてきました。この障害者青年学級ということは,18歳までは,要するに高等部で面倒を見てくれて,19歳から面倒を見てくれない仕組みになってきております。そうすると,その親御さんたちが一番困るのは,19歳からの放課後の居場所がない。今,横浜は,そういう居場所作りもやっております。

 もう1点は,非常に人柄がよくて,訪問販売にすぐはんこを押してしまい,払うお金がずっと増えてきて,結局親が苦労するという,そういう日常生活の生き方の学習をどこでマスターさせるかという仕組み作りも必要かと思いました。そういう意味で,この障害者青年学級に非常に新鮮みを感じて,是非,検討していただきたいというのが1点です。

 2点目は,あるICT企業が,聴覚障害者が陸上で走る場合に,ピストルの音を聞けませんので,それをスマートフォンでアプリを作って,スタートラインに立って,それを見てからスタートするという特定の障害を持った方に対するサポートシステムを,ICTを使ってやっているようなこともある。そういった企業との連携も含めて,やっていただけると良いということもあります。非常に大事な着眼点を出してくれて,非常に感心しております。頑張っていただきたいと思います。

 では,次は報告に移りますけれども,まず,働き方改革(社会人の学び直しの推進)についてでございます。事務局から,小谷参事官,お願いします。 (後略)

 

 


 

文責 久田信行